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kakeChum

カケチュム 「○○×(かける)チュム춤」 管理人Narimorがチュムと日常の出来事を掛け合わせて綴るブログです。 kakeChum. 「○○ × (multiplied by) Chum(dance)」. This is a blog written by the concierge Narimor by multiplying Chum and daily life.

ずれたプレート

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交差点でのこと。

町の南北を流れる片側2車線の車道、東西は1車線とも言い難い自転車が最適な幅の通り。といっても横断歩道と信号がしっかり見守っている。

遠くの山と空を見ていた。水に溶け混ざっていく絵具のような雲たちが信号待ちのひと時を楽しませてくれていた。車のヒーターをつける。そしてマグボトルに淹れてきたコーヒーを少し啜る。のどかな信号待ちだ。

そして信号が青になりアクセルを踏みだした時、角度的に少し前へ進まないと建物のでっぱりで視野がひろがらない左側前方から、白のスタイリッシュな自転車が私の車に吸い付きたいかのように猪突猛進してきた。今まで結構な年数を運転してきたが、幸いにもこのパターンは初めてである。

車の私も自転車の彼女もとっさの急ブレーキの反動で前へのめりこんだ身体が元のポジションへと押し戻された勢いのままフリーズしていた。この出会いがしらの一角の空間だけが凍っていた。ほんとドラマのようにそんな瞬間はスローモーションであった。この氷のような瞬間を割り裂きたく周りを見渡してみると歩行者、自転車、車たちは自分の行く道を淡々と行き交っていた。

上がったままの肩と息を下ろす。身体の力が抜けたら凍った時空間も溶け思考が取り戻された。頭を素早くペコペコ連続させ謝っている20代後半くらいの女性。

私「大丈夫ですか?けがないですか?」

自転車「すみません。信号みてませんでした。(笑)」

私「どこも当たってませんか?」

自転車「車と当たる前にとまりました!(笑)」

白でスタイリッシュな自転車は猪突猛進癖のご主人様をサドルにまたがらせたまま横断歩道の始まりの手前まで軽やかにバックしていった。いつものことでやれやれといった感じか。そのご主人様はとても笑顔である。なぜだ?元々笑い顔?緊張からか?いや泣いているのか??。。さておき、その笑顔にとても救われたのは事実だ。私はひとまず、とにかく安心した。

10-15秒ほどの出来事だったろうか。無事を確認したらそれぞれ行く道へ行き、事なきことを同乗者と安堵した。が、そこからおかしくなっていった。全身の毛穴が天に向いてぱっくり開いた。そして皮膚の表面を電流が走り全身をビリビリが覆っている。心臓が打ち出すリズムとボリュームが身体の外へ漏れている。大丈夫ではないのは私だった。

そして今関係あることないことをすごく話したようだ。しかも早口で。受けた衝撃を心身から一斉に排出するかのように。内から外へ押し出す声と呼吸が雪崩のように口を滑っていく。口から排出しているうちに電流による磁場は幾分か穏やかになり、漏れてた体内の爆音も治まったようだ。でも私のズレたプレートはなかなかハマることなく深く食い込み違和感が残ったままであった。

一度ズレたものは再びピタッとハマる場所が用意されているパズルとはいかない。何かがズレた深淵のその亀裂から飛び出してくる。ズレを定位置として循環していく感じだ。一足遅くやってきたショックな状態というより、一瞬という瞬間の存在について雷に打たれたようだった。

いうならば、手を上げて描く振りだから手を上げて踊るといよりも、上げた手の先から動き出したら踊っていて何かが描かれていたという感覚だろうか。

上げた手の先からどう繋がっていくのかは、わからない。その一瞬のみが知っているのだろう。上げた手の先からクルクル回るのか、斜めに横切るのか、何かをつかみに行くのか、はたまた空中で静かに佇んだままなのか。手を上げてみたらわかるだろう。その時間その場所のその瞬間の全てからだから、その一瞬が作り出される。唯一無二の一瞬。その連続。その完璧な一瞬という瞬間の中に存在している私。

きっかけはどうであれ、何かでずれたプレートの深淵から放出される一瞬の連続が織りなすものがチュムとなり、その電流に感電し磁場が狂った記憶の中で蘇るチュムにまた感電する。こんな一瞬があと何回経験できるのだろうか。亀裂からであれ、物理的であれ排出されるものをそよ風のようにふかせてあげたいと思う。

なにはともあれ、事故にならずよかった。ケガがなくてよかった。